◎新年あけましておめでとうございます

新しい年が明けました。昨2010年は、政権交代という「時代の画期」に胸ふくらませたものですが、歴史には紆余曲折がともなうことを再認識しました。通常は前進と後退が繰り返されるところに進歩が見えるはずなのですが、混沌とした滞留の状態にあるというのが現状ではないでしょうか。すなわち、若者の職業選択の自由が閉ざされていること、現役の勤労者に就業管理が強化されて賃金保障が不安定になっていること、高齢者の年金・医療保障に「健康で文化的な生活」が脅かされていること、さらに少子化対策としての「子ども手当」が現金額の多寡で混乱していること、これらは短期だけではなく中長期のビジョンを描くことが不可欠であると考えます。こうした滞留状態を打開するため、地方自治の前進という観点から課題解決に接近してみましょう。
 第1に、若者、現役の勤労者、高齢者や子どもたちは地域に生活する身近な住民であるということから、若者の就職問題、低賃金による消費の冷え込みによる地域経済の問題、高齢者福祉へのサポートなどの具体的施策を喫緊に打ち出すことです。そのうえで、自治体ではできないことを国に対して政策要求をすることです。いわゆる「補完性の原則」の実践です。
 第2に、若者、現役の勤労者、高齢者、母親などの各層がそれぞれにおかれた現状と問題点を議論する「場」を自治体が積極的に提供することです。さらには各層がおなじ地域住民として連帯できるような「場」も必要となるかもしれません。地域に暮らす多様な人びとのネットワークづくりは自治体の役割のひとつで、その音頭をとるべきです。これは自治の醸成にも繋がるもので、「近接性の原則」を具体化したものといえます。
 第3は、自治体は、短期政策あるいは中長期ビジョンを地域に暮らす人びととともに創りあげる努力をすることです。これまでは自治体が「ビジョン案」を作成して、パブリックコメント、少人数の審議会などの手法を採用して「住民の声」を汲み上げようとしていますが、多数の声にはなっていないのではないでしょうか。インターネットで「100人委員会」を検索しますと、京都市、松江市、広島県教育委員会、鹿児島県などがチャレンジしているようです。「地域住民が主人公」という姿勢を体現している努力だといえます。
 以上の3点は大きな予算は必要ではありません。しかし、相応の時間を必要としますが、地域民主主義の対価だとすれば、それも地方自治の前進という買い物ができるでしょう。自治体は地域の暮らす人びとの生存権を保障することに存在意義があります。地域に暮らす人びとと自治体が議論することにより、混沌とした滞留の状態を少しでも改善し、わがまちのビジョンを共有することができれば、地方自治の前進の一歩となると考えます。
 2011年、県下の自治体に「100人委員会」が創られて、百家争鳴の地域づくりが沸き起こる地方自治が前進する「元年」にしたいものです。同時に、香川自治研では、「月報」の定期発行と内容の充実、役員体制と事務局の再編成に着手して、「リ・セット香川自治研」をめざします。みなさんのご協力とご理解をお願い申し上げます。
 元旦 香川県自治体問題研究所 田村彰紀